SHIPS なんばパークス店

2021 09 Dec

妄想ネクタイ十人十色 第4話 〜ショップスタッフの徒然日記〜

いつも忙しくさせてもらっています、

なんばパークス店の今井です。
 
 
人にはそれぞれ長い人生の中で大事な瞬間が幾度か訪れます。
 
その一瞬を切り取ってみると
 
華やかな時間を演出する人生の小道具たちが存在します。
 
そこに輝くネクタイたちを妄想しながらチラッと覗き見する企画。
 
少しお久しぶりになりましたが、
 
シリーズ「妄想ネクタイ十人十色」
 
本日のお客様はこの12月に定年退職をした小口さん。
 
まさに今日、
 
その日を迎えることになりました。
 
某中堅物流倉庫会社の輸入食品在庫管理担当。
 
大学を卒業して新卒として入社。
 
転職することなく38年間同じ会社で最後まで勤めあげました。
 
とても素晴らしいことだと思います。
 
彼が入社したのは1983年。
 
その後まもなくバブル景気がやってきます。
 
今でこそ笑顔の素敵な大人しい小口さんですが、
 
当時若かりし頃はイケイケの時もありました。
 
金曜日の夜には後輩を連れ立って、
 
決まって心斎橋筋にあった伝説のデイスコ「マハラジャ」に通い
 
踊り狂ってナンパを楽しみ、
 
大人の青春を謳歌していました。
 
あの頃の心斎橋、そして宗右衛門町界隈はほんとに賑やかでしたね。
 
深夜過ぎて堺にある自宅までタクシーで帰ったり、
 
朝まで遊んでそのまま仕事なんてことは日常茶飯。
 
なんせ今では考えられないくらいの給料をもらっていましたからね。
 
それはそれは楽しい時代でした。
 
そんな夜の社交場で出会った女性と30歳を過ぎて結婚。
 
その後間もなくパパとなり、
 
20年ローンで和歌山の郊外にある林間田園都市に一戸建てを購入。
 
そこから大阪市港区にある倉庫まで日々満員電車に揺られ通勤してきました。
 
公私共に順風満帆かと思っていましたが、
 
2001年には世界同時多発テロが起こり、
 
景気に左右されながら給料は上がるどころか少しずつ減少していく。
 
一時倒産の噂も流れながらなんとか持ち直した矢先に
 
2008年のリーマンショックで世界同時株安と
 
勤め先の景気は悪くなるばかり。
 
転職していく同僚を横目に小口さんはそれでも会社に恩義を感じ、
 
転職することはありませんでした。
 
その後業績は安定していましたが、
 
このコロナ禍で再び厳しい状況になって現在に至ります。
 
今年定年の小口さんは会社の今後が気掛かりでなりませんでした。
 
 
そんな会社に忠誠を誓い続けた小口さん、
 
実は課長職ではありますが部長に昇進することはありませんでした。
 
地道に仕事をこなす彼ですが、
 
媚びることが出来ない性格が災いしてか、
 
出世競争では勝ち残ることが出来ませんでした。
 
でも変わりにたくさんの財産があります。
 
それはお金では買うことが出来ない「人望 」
 
彼を慕う後輩がたくさんいたので
 
彼の課はとても和やかな空気で職場環境はとても良かったんです。
 
それって給料以上に仕事する上では大切な事ですよね。
 
だからこそ精一杯定年するその日まで勤め上げることが出来ました。
 
 
 
 
そして定年を迎えた今日、
 
彼の最後の日を飾ったネクタイは、
 
9月に奥さまとシップスなんばパークス店にお買い物に来た際に
 
奥さまがワンピースを選んでいる間、
 
小口さんが手持ち無沙汰だったのでふらっとネクタイコーナーで眺めていたものなんです。
 
奥さまが似合うから買えば!」
 
と言ってくれたものの「もうネクタイをすることもあと僅かだからいいよ、、、」
 
と一旦は見送ったものの奥さまが強く勧めてくれるので、
 
最後のネクタイとして買ったもの。
 
それは奥さまが最後の最後まで気持ち良く仕事して欲しいという思いからでした。
 
 
 
 
そんな小口さんの有終の美のその時を締めくくったネクタイがこちら。
 
 
 
 
「Puccini」
 
品番 118-24-1146
¥12,980 inc tax
 
 
イタリアのネクタイ生地メーカーの「Fermo fossati」社の協力でできあがったシリーズ。
 
 
シップスらしさと身に付けるその人らしさをさりげなく演出することが出来る柄。
 
 
必要以上の個性は要らない。
 
 
だけど少しは気持ちが揺さぶられる個性は欲しい。
 
そんなわがままにお答えすることができるネクタイでした。
 
 
 
残念ながらコロナ禍で盛大な小口さんの送別会は行われませんでした。
 
最終業務を終えた瞬間、
 
部署の皆さんが小口さんを囲みました。
 
泣くことはないと思っていたのに、、、
 
大きな花束を受け取った後の、
 
後輩からのもらい泣き。
 
小口さん、
 
よく今まで頑張って来られました。
 
 
 
 
最後、
 
よき相棒だった部下の木下君との別れ際、
 
小口さんはこの「Puccini」のネクタイをシャツから外し、
 
「お前が似合うよ。」
 
と、
 
今後この課の課長を引き継ぐことになった木下君に差し出したのでした。
 
 
 
 
 
 
木下よ、
 
あとは頼んだよ。
 
 
 
 
小口さん、
 
ほんとに長い間お疲れ様でした。
 
 
 
 
「妄想ネクタイ十人十色」お付き合いありがとうございました。
 
もちろんわたしの妄想フィクションでござます。
 
ではまたのご来店お待ちしております。
 
ありがとうございました。
 
 
 
 
なんばパークス店 今井